Q1 |
中国・ベトナムへの投資についておっしゃっていましたが、インドへの投資状況は?
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A1 |
インドはカースト制の国であり、エリート階級が存在する、エンジニアが強いといった特色があります。優秀な人材を安価に雇えるので、オフショア開発に向いているといえるでしょう。現状は、言葉の関係で、英語圏、特にアメリカとのつながりが深くなっています。
日本がオフショア開発を行う場合は、中国のほうが距離が近いことと、漢字の文化だから一緒に仕事がやりやすい。実際、我々も開発会社を買収し、オフショア開発に取り組んでいます。
インドはカルチャー的にやりにくい面があって、まだ投資は行っていませんが、経済が伸びているので興味は持っています。
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Q2 |
投資判断を行うときに重きを置くことがらは?
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A2 |
我々はシーズに対して、まだサービスのプロトタイプができていない時から投資をしています。中には、紙の事業計画の段階のものもあります。我々は、事業計画に書かれている数字は評価しません。このアイデア、この人間であれば一緒にやっていけると思える人に投資するのです。創業に参画して、一緒に事業活動を行って成長させる、つまり、ハンズオンの方式です。紙に書かれていた計画通りに進んでいない事業もたくさんあります。しかし、我々はポテンシャルを持った人に投資しているので、もし当初の計画がうまく行かなかったら、次の仮説にチャレンジさせるといった方針転換も可能になるわけです。いつの時代も、国境を超え、ドメインが違っても経営の基本は“人”であることに違いはないと思います。
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Q3 |
新生ngi groupになってからの人材採用戦略、育成戦略の変化は?
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A3 |
ngi groupは純粋持株会社なので、それほど人は要らない、投資先を管理するのに必要な人数だけいればよいのです。ですから本社は少数精鋭です。新卒も、幹部候補として採用し、育成部門にも力を入れています。各事業会社は、その事業に適性を持った人が入ってくるべきという考えで、各社独自に採用を行っています。いずれも適材適所、やりたいことができる環境を提供することに配慮しています。雇う側と雇われる側という関係にとらわれず、win-winの関係を築くことが重要だと思っています。
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Q4 |
中国のベンチャー企業が、ngi
groupから投資を獲得するベネフィットは?
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A4 |
アメリカのベンチャーキャピタルも、中国への投資をしています。元々アメリカで働いたり学んだりしていた人が、ネットバブル崩壊によって中国に戻り、ベンチャーキャピタルから支援を受けて中国で起業し、ナスダック上場というケースがほとんどです。アメリカのベンチャーキャピタルは、成功が見込める段階になったベンチャーに高い金額を投資しています。我々はできたばかりのベンチャーに投資をするので競合しません。
中国でもmixiが有名で、mixiのngiとして知られています。mixiに投資した時は、まだ会社もできていない時から机を貸して創業者を育てました。こうしたインキュベーション実績をもって中国に進出しているので現地でも知名度は高いようです。
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Q5 |
日本のベンチャーが海外進出を行ううえで、成功の要素は?
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A5 |
実際に日本人が海外に出て、自分たちでどこまでやれるかというと難しいです。現地の人と一緒にやっていくことが必要です。いかに信頼できるパートナーを見つけて一緒にやるかがポイントです。僕たちにも、現地のパートナーがいます。信頼できる人から紹介された、人脈の輪を作っているのです。海外進出をしたい国内ベンチャーに対して、ngi
groupがアレンジメントの窓口としてお役に立てるよう、現地企業とのパートナーシップを強化しているところです。
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Q6 |
中国のHiPiHiに投資することと、セカンドライフ事業は矛盾しないのか?
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A6 |
我々は、マルチプラットフォームという方針を持っています。それぞれのサービスの閉じられた世界の中では、バーチャルワールドは広がらないだろうということです。セカンドライフ、HiPiHi、There・・・。それらが行き来できたり、仮想通貨の標準化に向かっていくだろうと考えています。こういう前提のもとで、いくつかのプラットフォームを「担いでいる」状態なのです。
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Q7 |
新興IT企業が、大企業に比べて特許に消極的である理由は?
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A7 |
日本の新興IT企業には特許を取るというカルチャーがなく、専門の部署もありません。グローバルに展開すると激しい競争を仕掛けられるので、特許は防衛のためにも必要となりますが、現状は経営的に意識されていないこと、またハードウェアの場合は技術の特許が価値を持ちますが、ビジネスモデルが特許で保護されることは現実的に難しいためです。
アメリカには一時、ビジネスモデル特許というものがあり、投資価値もありました。しかし特許では何も守れないことが分かり、機能しなくなったという経緯があります。
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Q8 |
投資に失敗した事例は?
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A8 |
我々はベンチャー投資なので、10のうち3つくらい当たればよいほうです。まだまだ育成途中の会社が多いですし、有名でも利益があがっていない会社もあります。
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Q9 |
投資対象プラットフォームにweb2.0のレイヤーを置いた背景は?
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A9 |
現状のインターネットはCGM的になってきていますが、それをどうビジネス化していくかが課題だと考えています。従来、インターネットでモノを買うときには、検索してショッピングサイトを見つけるというふうに、買いたいものが決まっていることが想定されていました。一方、バーチャルワールドでは、アバターがショップに入ってウィンドーショッピングをしたり、イベントに行ったりして、偶然にほしいものを見つけるというスタイルになります。偶発性を生み出すことで、いろいろなビジネスチャンスが生まれるのではないかと思います。
web2.0がどうなるかというより、1.0のノウハウを応用して、今どのようなビジネスができるかどうかを考えることが重要だと思っています。
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Q10 |
現在学生で、起業を考えているが、スタートアップ時に求めれられることは?
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A10 |
アイデアを事業化するという面では、大学の場合、アカデミックなアプローチになってしまうという側面があります。アメリカの大学から事業が生まれ、成功している背景には、社会人経験のある人が起業しているということも大きく関係していると思います。社会人がビジネススクールを卒業し、コンサルや投資会社の仕事に就き、ベンチャー支援を経験し、自らが起業をするといったキャリアが考えられます。マネジメントを含めた事業化経験がないのが、日本のベンチャー起業家のネックであると思います。したがってベンチャーキャピタルがまず行うことは、お金を出すことに加え、プロの経営者とマッチングさせて、マネジメントチームを作ることなのです。
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