Eビジネスマイスターに聞く!JANES-Way 共催セミナー ブログ メルマガ リリース スタッフ募集 サイトマップ


Eビジネスマイスターに聞く!






株式会社インプレス 日刊工業新聞社 株式会社マーケティング研究協会
 共催パートナー募集!!

 
■ Report
  
第90回「Eビジネス研究会」                          平成19年9月28日(金) 
   
テ   ー  マ:

『新生ngi groupの戦略と今後の展望』
〜ネット市場の枠から飛び出し、
         海外をも視野に入れるその狙いとは〜

   
Eビジネス:
マイスター
ngi group株式会社
代表執行役社長CEO
小池 聡 氏
    

90回目の今回は、ngi group株式会社 代表執行役社長CEO 小池 聡 氏をお迎えして、『新生ngi groupの戦略と今後の展望』 をテーマに、同社が重点投資領域とする3Dインターネットやアジア市場の現状と将来的なビジネスチャンスについてお話いただきました。


■西川氏との出会いから、ngi group誕生まで


私は1993年、iSi-Dentsu of America, Inc.のインターネットビジネスユニットの一員として渡米しました。これは、アメリカの事業の中でも、インターネットに特化したものとしては一番早いほうだったのではないかと思います。


その会社が1995年に上場し、アメリカではインターネット・ゴールドラッシュが始まりました。その時期は啓蒙やホームページ制作が中心で、最初のお客様は日本総領事館だったのです。その後、相当な数のホームページ制作を行いました。 そして、同社のインターネット部門が独立する形でNetyear Group, Inc.設立。1998年には当時には珍しく、MBO(マネジメントバイアウト)をしてネットイヤーグループを設立しました。


その後、1999年に日本でネットイヤーグループの日本法人を設立したのですが、それを遡ること数年前、私が出張で日本に戻ったとき、私の後輩が主宰しているワインの会がきっかけで、そこで西川と出会ったのが最初です。私がネットビジネスのインキュベーションをしていると言うと、西川も同じようなことを考えていて非常に興味を持ってくれました。その当時、彼はAOL Japanにいたのですが、親交が深まり、1998年に西川がネットエイジという会社を創業しました。


その創業と私の独立がちょうど同じくらいのタイミングでした。独立後すぐにネットエイジに出資をして、私が社外取締役に就任しました。 私はネットエイジの大株主、リードインベスターとして経営をサポートする立場にいました。 日本にもシリコンバレーを作ろうということで、ビットバレーという構想を作り西川と一緒に日本で啓蒙をしたというのが最初の活動です。


その後、ネットイヤーグループの投資インキュベーション会社とネットエイジを経営統合いたしまして、ネットエイジグループという会社を2003年に設立、実際は2004年に発足させました。その後、ビジネスモデルを変え、収益の出る体制にして、昨年9月には、東証マザーズに上場しました。


私どもが設立当初からお手伝いしていたmixi(当初の社名はイー・マーキュリー。求人情報サイト「Find Job !」を運営)が、やはり昨年上場したため、私どもは大きなキャピタルゲインを得ることができました。


西川も私も、アメリカ流のガバナンスということにこだわっておりまして、社外取締役による委員会を設けているのですが、彼ら社外取締役のほうから、今まで私と西川の共同体制だったものを一本化してはどうかという提案がありました。それを受けて、この9月に新体制になりました。


■これまでに生み出したベンチャー


これまでに私たちが出資、育成をしてきた企業は相当な数にわたります。


代表的なものはmixiですが、社員がスピンアウトして立ち上げたECナビやFujisanマガジンサービス、feedpathなどもそうです。


社名や事業が変わっているものもあり、例えば、この前上場したカービューという会社は、我々が作ったNet Dealersという会社をソフトバンクグループに売却しました。「楽天フリマ」も、最初我々が出資したBizseekを、楽天に売却した会社です。ACCESSPORTも、ヤフーに売却し、現在はGMOインターネットグループの検索サービスになっています。「楽天ビジネス」も、我々が立ち上げたProTradeという会社がもとになっています。


■事業領域の拡大


新体制を機に社名を変え、事業領域を再定義しました。旧社名のネットエイジは、これからはネットの時代になると予測してつけた社名だったのですが、そこから10年経て、ネットの時代になるということが現実になり、社会的なインフラとして当たり前に定着しました。もう事業領域をネットに絞る必要がなくなったのではないか、社名にネットが入ることで、事業領域が狭まるといけないというのが背景です。


ngi groupはNet Age Group, Inc.の略ともいえますし、これからはベンチャーのイノベーションが時代を変えていくという願いをこめて、我々が"next generation innovator"になろう、その頭文字をとってngi groupという社名に変更したのです。


これまではインターネットビジネスに特化していたわけですが、これからはネットという枠を取り払った発想で、「インターネット」を軸にしながらも、そのノウハウを生かした新分野を開拓していきます。また、日本のネットベンチャーの雄として国内ネット企業の投資を行ってきたわけですが、今後は成長過程にある中国・ベトナムなどのアジア地域への支援を拡大していくことと、ネット以外の成長産業への投資も視野に入れています。ベンチャー・インキュベーションについては、これまでのモデルが機能していると思いますので、インキュベーションビジネスの海外展開を図ろうとしています。


既存事業だけでこれからも成長していけるわけではありません。基本の戦略ですが、既存事業を深掘りすることももちろん大事だけれど、既存市場から新規市場にシフトすること、既存事業を新規市場にもっていくこと、そして新規市場で新規事業を展開するという3つの方向性を持っています。我々にとっては、新規市場が中国・ベトナムなどのアジア地域、新規事業が3Dインターネットやファイナンステクノロジーの分野であると捉えています。そして、新規市場に新規事業というイノベーション。この全く新しいビジネスをいかに生み出せるかがこれからの課題です。


社名に込めたビジネスドメインの構想をお話ししますと、我々の事業領域は、次世代(next generation)のインターネット事業であるとともに、インベストメント、インキュベーションでもある。さらに、海外展開(new geographic initiative)も事業領域に入れることで、グローバル規模での新たなイノベーションを追求するというのが我々の持っているビジョンです。


■3Dインターネットへの重点投資


webプラットフォームのパラダイムシフトは、web1.0から2.0に来て、3.0にあたるものが3Di(3D Internet)であるといわれています。


webが提供する価値は、web1.0の段階では「アクセス(Access)」「発見する(Find)」、web2.0にきて「共有する(Share)」「参加する(Participate)」、3Diではさらに「協働する(Collaborate)」「共同創造(Co-Create)」へと進化を遂げています。


3Diの分野では、セカンドライフが最大手となっていますが、我々は3社ほどが勝ち残ると見て、セカンドライフ、There、HiPiHiの3つに投資を行っています。
バーチャルワールドの売上は、アメリカでは2012年までに60億ドル(約7200億円)に達すると見込まれ(米DFC Intelligence予測)ており、みずほコーポレート銀行は、セカンドライフで流通する仮想通貨「リンデンダラー」の年間取引量は2008年には1兆2500億円になると試算しています。実際、それを可能にするような大手企業が3Diの世界に進出しています。


ngi groupは、国内外の有力なサービス事業者との提携、出資をいち早く開始し、日本で最も有利なポジションを築いています。我々が手がけているのは、3Diへの進出コンサルティングや技術開発などの分野です。今年6月に、仮想空間ビジネス専門会社である「3Di」を設立。ブラウザ経由でセカンドライフに接続するゲートウェイの開発や、仮想空間に関するニュースの閲覧・検索ができるポータルサイト「THE SECOND TIMES」開設などの実績をあげています。また、セカンドライフ上に株主総会を中継するという日本初の試みを行うなど、当社のセカンドライフへの取り組みは国内外のメディアで注目されています。


■アジア市場への重点投資



中国・ベトナムへの取り組みの一環として、政財界へのコネクションを築いています。中国では、政治経済を牛耳る共青団や、主要IT企業とのコネクションを持っています。日中韓経済人サミット(北京人民大会堂にて開催)で日本代表団団長として公演させていただいたり、CCTV(中国国営放送)からインタビューを受けたりしました。 ベトナムでは、ベトナムNo.1の工科大学であるハノイ工科大学と提携を開始しました。


中国国内で約4000社のローカルTV広告ネットワークを保有しているローカルTV広告配信会社、3Diのお話の中でも紹介したHiPiHi、上海で17の大手デパート・モール内に大型スクリーンを設置し、広告配信を実施するスクリーン型ネットワーク広告会社など、中国企業への投資を積極的に行っています。




● 質疑応答


Q1 中国・ベトナムへの投資についておっしゃっていましたが、インドへの投資状況は?

A1 インドはカースト制の国であり、エリート階級が存在する、エンジニアが強いといった特色があります。優秀な人材を安価に雇えるので、オフショア開発に向いているといえるでしょう。現状は、言葉の関係で、英語圏、特にアメリカとのつながりが深くなっています。 日本がオフショア開発を行う場合は、中国のほうが距離が近いことと、漢字の文化だから一緒に仕事がやりやすい。実際、我々も開発会社を買収し、オフショア開発に取り組んでいます。 インドはカルチャー的にやりにくい面があって、まだ投資は行っていませんが、経済が伸びているので興味は持っています。


Q2 投資判断を行うときに重きを置くことがらは?

A2 我々はシーズに対して、まだサービスのプロトタイプができていない時から投資をしています。中には、紙の事業計画の段階のものもあります。我々は、事業計画に書かれている数字は評価しません。このアイデア、この人間であれば一緒にやっていけると思える人に投資するのです。創業に参画して、一緒に事業活動を行って成長させる、つまり、ハンズオンの方式です。紙に書かれていた計画通りに進んでいない事業もたくさんあります。しかし、我々はポテンシャルを持った人に投資しているので、もし当初の計画がうまく行かなかったら、次の仮説にチャレンジさせるといった方針転換も可能になるわけです。いつの時代も、国境を超え、ドメインが違っても経営の基本は“人”であることに違いはないと思います。


Q3 新生ngi groupになってからの人材採用戦略、育成戦略の変化は?

A3 ngi groupは純粋持株会社なので、それほど人は要らない、投資先を管理するのに必要な人数だけいればよいのです。ですから本社は少数精鋭です。新卒も、幹部候補として採用し、育成部門にも力を入れています。各事業会社は、その事業に適性を持った人が入ってくるべきという考えで、各社独自に採用を行っています。いずれも適材適所、やりたいことができる環境を提供することに配慮しています。雇う側と雇われる側という関係にとらわれず、win-winの関係を築くことが重要だと思っています。


Q4 中国のベンチャー企業が、ngi groupから投資を獲得するベネフィットは?

A4 アメリカのベンチャーキャピタルも、中国への投資をしています。元々アメリカで働いたり学んだりしていた人が、ネットバブル崩壊によって中国に戻り、ベンチャーキャピタルから支援を受けて中国で起業し、ナスダック上場というケースがほとんどです。アメリカのベンチャーキャピタルは、成功が見込める段階になったベンチャーに高い金額を投資しています。我々はできたばかりのベンチャーに投資をするので競合しません。 中国でもmixiが有名で、mixiのngiとして知られています。mixiに投資した時は、まだ会社もできていない時から机を貸して創業者を育てました。こうしたインキュベーション実績をもって中国に進出しているので現地でも知名度は高いようです。


Q5 日本のベンチャーが海外進出を行ううえで、成功の要素は?

A5 実際に日本人が海外に出て、自分たちでどこまでやれるかというと難しいです。現地の人と一緒にやっていくことが必要です。いかに信頼できるパートナーを見つけて一緒にやるかがポイントです。僕たちにも、現地のパートナーがいます。信頼できる人から紹介された、人脈の輪を作っているのです。海外進出をしたい国内ベンチャーに対して、ngi groupがアレンジメントの窓口としてお役に立てるよう、現地企業とのパートナーシップを強化しているところです。


Q6 中国のHiPiHiに投資することと、セカンドライフ事業は矛盾しないのか?

A6 我々は、マルチプラットフォームという方針を持っています。それぞれのサービスの閉じられた世界の中では、バーチャルワールドは広がらないだろうということです。セカンドライフ、HiPiHi、There・・・。それらが行き来できたり、仮想通貨の標準化に向かっていくだろうと考えています。こういう前提のもとで、いくつかのプラットフォームを「担いでいる」状態なのです。


Q7 新興IT企業が、大企業に比べて特許に消極的である理由は?

A7 日本の新興IT企業には特許を取るというカルチャーがなく、専門の部署もありません。グローバルに展開すると激しい競争を仕掛けられるので、特許は防衛のためにも必要となりますが、現状は経営的に意識されていないこと、またハードウェアの場合は技術の特許が価値を持ちますが、ビジネスモデルが特許で保護されることは現実的に難しいためです。 アメリカには一時、ビジネスモデル特許というものがあり、投資価値もありました。しかし特許では何も守れないことが分かり、機能しなくなったという経緯があります。


Q8 投資に失敗した事例は?

A8 我々はベンチャー投資なので、10のうち3つくらい当たればよいほうです。まだまだ育成途中の会社が多いですし、有名でも利益があがっていない会社もあります。


Q9 投資対象プラットフォームにweb2.0のレイヤーを置いた背景は?

A9 現状のインターネットはCGM的になってきていますが、それをどうビジネス化していくかが課題だと考えています。従来、インターネットでモノを買うときには、検索してショッピングサイトを見つけるというふうに、買いたいものが決まっていることが想定されていました。一方、バーチャルワールドでは、アバターがショップに入ってウィンドーショッピングをしたり、イベントに行ったりして、偶然にほしいものを見つけるというスタイルになります。偶発性を生み出すことで、いろいろなビジネスチャンスが生まれるのではないかと思います。 web2.0がどうなるかというより、1.0のノウハウを応用して、今どのようなビジネスができるかどうかを考えることが重要だと思っています。


Q10 現在学生で、起業を考えているが、スタートアップ時に求めれられることは?

A10 アイデアを事業化するという面では、大学の場合、アカデミックなアプローチになってしまうという側面があります。アメリカの大学から事業が生まれ、成功している背景には、社会人経験のある人が起業しているということも大きく関係していると思います。社会人がビジネススクールを卒業し、コンサルや投資会社の仕事に就き、ベンチャー支援を経験し、自らが起業をするといったキャリアが考えられます。マネジメントを含めた事業化経験がないのが、日本のベンチャー起業家のネックであると思います。したがってベンチャーキャピタルがまず行うことは、お金を出すことに加え、プロの経営者とマッチングさせて、マネジメントチームを作ることなのです。


2007.9.14
                                     Copyright (c) 2007 Eビジネス研究所. All rights reserved.